歯医者対戦記 in ロサンゼルス
歯医者に行ってきた。
サクッと終わるだろうと思っていたら、これが3時間にわたる死闘。しかもやったことは(本治療前の)クリーニングだけである。なかなかツッコミどころが多かったので、アメリカでの治療録も兼ねてここに残しておきたい。(※ロサンゼルスの大学内(歯学部の学生さん(歯医者のタマゴ)が治療)での治療録です。体験には医療機関差・個人差があります。)
プロローグ
ことの始まりは2月のある日。おにぎりを食べていたら突然ガリっと嫌な感触が。銀の詰め物が取れたのである。そんなに固いおにぎりを握った覚えはないと思いつつも、仕方ないので大学運営の歯医者へ電話を入れる。
私:予約を取りたいのですが。
受付:おっけ〜そうね、次の空きは3月◯日ね!(約1ヶ月後)
私:ファッ!!?
私:いや・・・かくかくしかじか困っているので早く治療受けられる手段はないでしょうか?
受付:じゃあ緊急(Emergency)治療をやってる歯学部に行ってみるといいわ!
歯学部で緊急治療
ということで歯学部に電話。緊急治療には午前・午後受付があり、すぐにいっぱいになるので受付開始時間の1時間前に来いとのアドバイス。ではその受付「開始」時間とやらは何なんだと思いつつありがたいアドバイスに従い大学病院を訪れる。
待つこと3時間。トルコ人の学生さんが私の担当になる。この学生さんはすでにトルコで歯医者をやっていたが、もう一回学び直そうとアメリカに来たとのこと。経験者と聞き一気に安心感がわく。にしてもこの学生さん、患者を安心させるのがめちゃくちゃうまい。大丈夫?とことあるごとに声をかけ、ひとつ行程を経るたびに「よくやった!」と褒めてくれる。口を開けて寝てるだけで何度も褒めてもらえるので、人間としての自信がついてきた気すらする。「自信のないひとは、歯医者に通え」という本すら書けそうなくらいである。
などとどうでもいいことを考えているうちに緊急治療を終える。金属製の詰め物は緊急治療では作れないため、仮詰め用ペーストを埋め込んで、終了。
本治療決意
1ヶ月程度の滞在なら帰国して治療すれば良いが、まだしばらくこちらにいるので、本治療を決意。私の大学には歯医者か歯学部かの選択肢があるが、
◯歯医者:歯科医が治療し、2、3回の通院で済む。治療費は10マン超え(!)の可能性がある。
◯歯学部:歯学部学生が治療し(教授が逐次チェックは行う)、本治療開始までに少なくとも3回要通院(レントゲン、歯の状態チェック、クリーニング)、治療費は歯医者の半額くらいと予想される。
と告げられ、どっちも嫌なので治療を諦めかけるも、悪化するのはもっと嫌なので10マン超えを避けるべく歯学部通いを選択。この選択がそもそもの間違いだったかもしれない、と今思えば思う。
本治療開始
本治療は、韓国系アメリカ人の学生さんが 担当することに。しかしここからが長かった。3月にレントゲンを撮った後、次の予約を入れるも「担当教授が急遽出張」「他の患者が緊急」などの理由で延期に次ぐ延期となり、そろそろ穏便なワイも怒るでとなってきた5月下旬、ようやく次のステップに進むことができた。次は、歯の状態チェックである。
しかしこのあたりでわかってきたのだが、この学生さん、いい人なんだけどおっちょこちょい感なのである。学生さんによる歯のチェック後、再チェックしてくれた教授に何かを指摘され、「あ、歯の番号間違えてました」「あ、これ他の患者さんのデータでした」みたいな有様である(何でそのデータが今ここで混じる)。若干の不安を抱えつつも、いい人なので信頼して次のステップに移る。
クリーニング
そして今回のクリーニング。歯医者でよく見る「あれ」で歯の表面から隙間から根こそぎ削りまくられる。
学生:ではいきますねー(ゴリゴリゴリゴリ!!!!!)
私:(痛い痛い痛い痛い痛いっていうか歯が折れそう!!!)
学生:大丈夫?痛くない?痛かったら麻酔するから!
私:(こんなことで麻酔使ったら負けな気がする)グッ!!(親指を立てる)
学生:(ゴリゴリゴリゴリ!!!!!)
私:(いや一生懸命頑張ってくれてるのは非常にわかる・・・わかるんだけど、あなたの腕でメガネが押しつぶされて目が潰れてるんです!!)
私:(でもここで私が変に動くと口の中で大惨事が起こりかねない。我慢・・・我慢だ・・・)
学生:お水で口の中洗いますねー!プシュ!プシュ!ブシュワァア!!!(メガネと肌の隙間から水が入り込む)
私:ワァア(メガネの意味ない!!!)
学生:ごめん!!大丈夫!?(あたふた)
私:大丈夫です・・・(前掛けでメガネと目を拭く)
学生:ほんとごめんなさい・・・じゃあ続けますね。うーん・・・(いくつか種類がある「あれ」のどれを使うかを吟味し、両端のどちらを使うか試している)
私:(おお・・・そんな難易度の高いヤツが口内にあるのですか・・・)
学生:クルクルッ(と器用に「あれ」の上下をひっくり返す)
私:(それかっこいいんだけど顔の上でやるのやめてー!これまでの流れからすると多分落として顔に刺さるからやめてー!)
学生:(右手と左手で器具を持ち替え、左手で削る)
私:(え・・・?歯医者って持ち替えたりしてたっけ?そういう技あったっけ?それとも両利き?アスリートの訓練?)
学生:またお水で口の中洗いますねー!プシュ!プシュ!プシュ!プシュ!プシュ!
私:うぷ(水勢調節うまくなってるんだけど回数増やしすぎー!口内のキャパよく見てー!)
学生:ふう・・・終わりました、では教授を呼んできますね!
この辺りですでに2時間近くが経過。もはや顎が相当疲れているのでわずかに頷くしかできない。教授が来て、チェックをしてくれる。
教授:元気〜?(陽気)もうすぐ終わりだからがんばってね〜(サササッとチェックしていく)
私:・・・(だよね。やっぱり腕はメガネに当たらないよね。だしやっぱり右手と左手で持ち替えずにやってるよね。)
教授:(私の顔の上から器具を手渡そうとする学生に対し)それは患者さんの顔の上で渡してはダメよ。
私:(だよね!!!!!)
と教授が多くの疑問フラグを回収し颯爽と去った後、指摘された箇所をもう少しゴリゴリしてもらい、最後に研磨機で磨いて終了。3時間の死闘に終止符。もう顎動かしたくない。でも学生さんももう手動かしたくないと思う。お疲れ様でした。
次は数日後にいよいよ本治療。すでに緊急治療時に養われた自信はどこかに消え去った。本当に虫歯(だけ)を削ってくれるのか?他人のレントゲンを持って来たりしないか?いささか不安が残るものの、彼女を信じたいと思う。